今号は教育特集と東南アジア
Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2016年 3/22 号 [世界の教育 学力の育て方]
今号の内容はかなり濃い。
特集以外にも反動化する韓国の様子や注目の米大統領選の動向など記事が目白押し。 しかし2つの特集も力が入っていて読み応えあり。
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第一特集は教育。 教育経済学や非認知スキルなど最新の教育科学の知見を盛り込んだ内容に欧米の最新の教育事情の報道が続く。
とくに非認知スキルは学力以上に社会的成功に結びつくと言われ、近年注目されている。 非認知スキルというとわかりにくいが、社会性とか適応性とかいえばわかりやすくなる。 要は社会生活に順応し、困難への忍耐力、物事への継続力など数値化しづらい=認知しづらい要素を非認知スキルと呼んでいるのだ。
とくにこの非認知スキルはストレス対処に効果を発揮すると言われている。 ストレスが蔓延する現代社会には必須のスキルという触れ込みだ。 非認知スキルを子供にうまくつけさせるためのノウハウみたいなものが紹介されている。
ネットで大学の講義が無料で受けられるMOOCの最新事情やアメリカの教育動向、教育大国フィンランドの様子、アメリカアイビーリーグの人種差別問題、迷走する韓国の英語教育など記事は体系的ではないが、話題は豊富。
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3回目に入った地域別特集は東南アジアと南アジア。 低成長に苦しむ世界経済の中で比較的高い成長率を維持しているのがこの地域で、しかも急速に賃金が高騰した中国に変わって世界の工場を担いつつある。
ただ人種的にも政治的にも宗教的にも地政学的にも分断された地域だけにひとまとめに論じることは難しく、今号は国別に小分けに情勢分析している。
気になる記事はいくつか。
まずはフィリピン。 この地域では日本に地政学的性格が近く、また中国の外洋進出に対して抑えとなる国だ。 だがこの国で今親中派が台頭しており、大統領選の行方によっては親中政権が誕生するかも知れないという。 日本がこの地域で最も頼みとする国がフィリピンであり、その動向は気になるところだ。
マレーシアで台頭するイスラム主義を報じる記事も興味深い。 マレーシアは多民族国家であり、政治的主要民族であるマレー人に対して経済的には裕福と言われている華人が経済的影響力を持っている。 宗教的にもマレー人はムスリムで華人は儒教や仏教などを奉じ、イスラムの婚姻規定の問題もあって両者はあまり通婚せず混ざり合わずに共存してきた。
どちらかといえばこれまで穏健なイスラム国家だったマレーシアで徐々に民族主義と結びついたイスラム主義が台頭していることで内部対立が助長され、政治経済秩序に混乱が生じる可能性を報じている。
そしてアフガニスタンで勢力を盛り返すタリバン。 ISISも台頭しており予断を許さない情勢だ。 軍閥豪族の割拠状態も解消されておらず、政権も二頭体制で中央集権化は遠い。
Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2016年 3/22 号 [世界の教育 学力の育て方]