金融規制は金融危機を防げるのか?広汎な事例を元に金融規制の効果を斟酌する一冊
金融危機とバーゼル規制の経済学: リスク管理から見る金融システム
著者は国際決済銀行(BIS)支払い決済システムとバーゼル銀行監督委員会の委員を務めたことがあり、国際金融規制の実務に近かった人物。
本書はリーマンショックのような金融危機は金融規制で防ぐことができるのか、あるいは金融規制がなかったから金融危機が起こったという考え方は正しいかということを豊富な事例をもとに考察する内容だ。
本書ではたとえばリーマンショックを起こしたサブプライムローン問題についてもそこに規制がなかったという認識は誤りで、むしろ規制に抜け道があったりそもそも規制があるとそれをかいくぐって儲けようとする金融機関の実態を詳述している。
規制の意図した方向と実態の間にはギャップがあるのであり、その様子を理論と実務の両面から論じていく内容。 規制とは別に金融機関の主体的な利潤追求の行動があり、そうした実態面も含めて政策を決定していかなければ規制は逆に弊害をもたらしかねないという著者の鋭い指摘がわかる。
金融政策は理論モデルだけでなく運用の実際も丁寧に監視・監督しながら行われなければ効力がないどころか、逆に金融危機を大きなものにするということを納得の実例を用いて説いている。
金融危機とバーゼル規制の経済学: リスク管理から見る金融システム