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2016年、企業業績の動向を東洋経済が読み解く

週刊東洋経済 2016年3/12号 [企業業績特集]

 

 今号の特集は企業業績を巡るリスクシナリオを総点検する内容。 大方の想定以上に外部環境に振らされる日本株の原因を探る内容だ。

 

    ◆◇◆

 

 やはり大きな要因は円高。 アベノミクスの株高は企業の為替差益の下駄に支えられていたところもあり、円高は逆に株安要因になる。

 上海G20は通貨安戦争を批判し、米大統領選と利上げの行方もあり、今まで通りの円安は働きづらい。 日銀はマイナス金利でドル円相場に働きかけようとしたが、成功したとは言いがたい。

 世界経済の減速傾向がはっきりと確認されるなか、日本経済だけ強いというわけにはいかない。 むしろ年初の波乱相場の影響が先進国で最も大きかったのが日本株であったという事実は、先進国の中で日本経済が世界経済に振り回される脆弱な構造にある証左なのかも知れない。

 直近10~12月期GDP成長がマイナスに転落したことも投資家心理を冷やしている。 マイナス金利政策の効果については東洋経済は悲観的だ。日経ヴェリタスSMBC日興證券の試算を挙げて銀行にはプラス効果と報じていたが、東洋経済は独自試算でざっと8000億円規模のマイナス効果が銀行に加わるとしている。

 

 プラスかマイナスかはじつはあまり重要ではない。

 1つの政策効果について全く逆の見方が出ることこそが問題で、マイナス金利の行方について共通見解はないのだ。 個人的には東洋経済と同じ見方で銀行収益を押し下げ、長期的には市中に出回る通貨量を抑制し、実体経済を押し下げる効果が強くなるように思うが、現状でマイナス金利の全ての経済効果が明らかになっているとは思えず、最終的にどういう効果があるかは運転しながら見極めるしかない状況だ。

 こうした不透明性は結局投資家心理にしばらくはマイナスに働くことは確実だろう。 iPhone6sの減速が見えてきたアップルショックも大きい。 元々昨年段階でアドバンテストなど基幹部品の製造に関わる銘柄はすでに売られていたが、アルプス電気など基幹部品を製造している銘柄はチャイナショック後もなお比較的強さを維持していた。 ただ投資家も企業もすでに次のiPhone7に目を移している。 製造サイドはまだ強気のようであるが、アップルのiPhoneの販売ポリシーは変化しつつあり、それに伴う製造パートナーの構造変化もあり得る。

 実際東洋経済は取り上げていないが、平田機工の直近の値動きはそうした構造変化を敏感に感じ取って動く投資家心理を反映しているように思う。

 

 資源安のダメージも一部企業には重荷になっている。 東洋経済は別記事でコスモエネルギーホールディングスの苦境を報じているが、原油価格が回復基調に入っても業績に反映されるまでのタイムラグがあり、商社や資源関連企業は来期まで減損は続く見通しであるという。

 しかしこの問題はむしろ米国のシェール企業などエネルギー関連企業の倒産が広がった場合にサブプライム問題類似の危機が発生するかどうかという問題が主であるような気がする。 関連して異様に発行数が増大しているハイイールド債も不気味である。

 

 記事はほかにもリスクを挙げており、詳しくは直接見て欲しい。 業界ごとの業績動向予想や一部上場企業の理論株価を紹介している。

 

     ◆◇◆

 

 さて、いささか話は脱線するが、世界的なリスクオフの根本的な問題は実体経済と金融経済のギャップ問題にある。

 先進国がこぞって金融緩和政策をとっているなかで膨張し過ぎた金融経済資本に対し、実体経済はそれを消化できるほどの成長率を維持できていないという根本問題がある。

 金融経済はたとえば日経平均で言えば2013~2015の3年間で平均して年率20%以上成長してきたのであるが、GDPはほとんど変わっていない。 その国の主要市場の株価は長期的にはその国のGDPとほぼ連動して上昇するという説があるが、それに基づけば日経平均は結局GDPよりは為替の影響によって動いたと考えた方が良さそうである。 ドル建て日経平均はだいたい120ドル付近から150ドル付近まで25%上がっているので、これが金融緩和の効果であったということであろう。

 こうして金融緩和によって金融経済は膨張したのであるが、実体経済の成長はどう考えてもそれに見合っているとは思えない。

 

 問題はこうして増えた通貨が果たして市中にそれほど流れたのかという問題である。 実体経済を押し上げるためには市中での通貨の流通量の増大が必要であるが、むしろこうして増えた金融経済は貯蓄などに回され市中にそれほど出回ってないのではないかという印象を与える。

 少なくとも消費の拡大傾向が日本国内でインバウンド需要を除いてほとんど見られないことを考えると、株式市場で膨らんだ金融経済の「カネ」は実体経済にうまく流れて交換手段として積極活用されているとは言いがたいように思う。

 結局増えた通貨は交換手段として活発に使われない限り、実体経済に十全な効果を及ぼすことはない。

 

 こうした増大した金融経済の問題は次の一点に集約できる。 金融経済によって膨張した金融資本は実体経済を必要以上に不安定化させる要因となりうる。 それは金融資本が持つ側であるがゆえに持たざる側、つまり資本を必要とする実体経済の担い手に資本を貸し出すことも貸さないことも自由に決定できるのに対し、実体経済の側はつねに資本を必要とするとするという根本的な不均衡によって生じる。

 そして政府にはこうした金融資本に投資を促すように働きかける手段は限られており、アベノミクスに決定的に足りないのがこの自己増殖する金融資本を実体経済にどう振り向けるかという道筋である。

 金融資本は実体経済が停滞していると感じれば自ら資本をシャットアウトするのであり、金融危機とは大部分この金融資本の自己シャットアウトにより実体経済の冷え込みがさらに拡大されることにその根本原因がある。 実体経済が不調でも市中に十分な通貨が出回っていればその信用供与により経済はなんとか回り、自己回復するのである。 現況の日本はしかし、市中に通貨が実際は十分に出回っていないために、実体経済が萎縮することになっている。

 消費税増税も通貨流通を一般的には抑制する。 経済成長を伴わない増税は最終的には財政にも悪循環をもたらす。 もはや金融緩和が実体経済への十全な効果を発揮し得ない以上、経済成長のためには雇用や金融において大胆な構造改革が必要とされる。

 それがマイナス金利の導入だったのであろうが、これは明らかに慎重に検討された結果とは言いがたいし、むしろ小手先の手段に属するものであった。

 

 この世界的な低成長のなかで経済成長を実現するためには雇用や金融、税制、通貨制度における大胆な構造改革が必要に思うが、現況の政府に果たして根本的な解決をはかる度胸はあるだろうか。 もはや改革はまったなしであるが、同時に道を見誤れば引き返せない。

 難しい時代である。

 

週刊東洋経済 2016年3/12号 [企業業績特集]


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