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実務能力よりイデオロギーに翻弄される大統領選、世界最大のエンタメ

Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2016年 3/15 号 [創刊30周年 特別企画 国際情勢入門 病める超大国]

 

 先号から始まった地域別情勢特集、第二弾はアメリカだ。 混迷する大統領予備選の様子を中心に報じる。

 

    ◆◇◆

 

 今回の大統領選を特色づけているのはプロ政治家の苦戦だ。

 ニューズウィークは興味深い世論調査の結果を挙げているが、外交政策の専門家に聞くと民主党ではヒラリー・クリントン候補、共和党ではジョン・ケーシック候補の評価が圧倒的に高い。

 アメリカ大統領という地位は超大国の指導者として世界全体を見渡した軍事力行使も含めた主体的な外交が求められると思われるが、その点でサンダース候補もトランプ候補もプロからは歓迎されていない。

 トランプ・サンダース両候補を支えているのは現状に強い不満を持つ人々で、サンダース支持派は若者、トランプ支持派は排外主義的な権威主義保守主義者で、どちらにせよ既存の不安を取り除くために強い指導者を求めているという。 こうした人たちが既得権益者に属するプロ政治家よりむしろ分かりやすいイデオロギッシュな言葉で既得権益を攻撃するサンダース氏やトランプ氏を選んでいる。

 現状ではこうした動きが全てを押し流し始めているように思うが、結論づけるのは早計だとニューズウィークは言う。 アメリカで大統領予備選に参加する積極的な政党支持層は5割程度に過ぎない。 大統領本選ではほとんど無党派に近い残り半分のアメリカ国民の票動向が物を言うはずだと。

 予備選はむしろ国民の不満を表明するはけ口となっていて、そうした意味で一種エンタメ化しているというような見方をニューズウィークは示しているようだ。 それは本当の政治イベントの前の前夜祭の虚ろな賑わいに過ぎないとでも言いたげだ。

 

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 問題はこうした動向が今後の継続的な方向の始まりなのか、それとも一時的な熱狂に終わるのかということだ。

 私には「オキュパイ・ウォールストリート」運動がいよいよ政治の中心に乗り出そうとしている動きに見える。 アメリカが没落しつつあるのではないか、それが格差という生活問題につながっているのでないかという危機意識の台頭と価値観の転換が同時に起こり始めている気がする。

 その波の中心にいるのがニューズウィークが挙げる「ミレニアル世代」、基本的には冷戦崩壊後の世界で生きてきた若者たちだ。 彼らは社会的正義を求める傾向が強く、企業広告などよりも口コミの情報を重視する。 社会問題にも関心が高く、共産主義的な共生社会への共感度も高い。

 そして彼らはリーマンショックの最大の被害者でもあり、高騰した学費負担の返済に苦しんでいるワーキングプア層でもある。 所有欲が低く、モノより体験を消費する傾向があり、それは彼らの経済状況によるところも多少はあるだろうが、それまでの世代とは異なり、世界と自由につながり、他者と体験を共有することで豊かさを享受しようという考え方を持っているという。

 

    ◆◇◆

 

 アメリカの経済状況でも貯蓄の増加という特異な現象をニューズウィークは取り上げる。 日本でも実はアベノミクス導入後に貯蓄の増大が見られているが、景気が回復基調に入ると見込まれても人々の消費は増えない。 消費の低調さが経済を冷やしているのか、経済の見通しの悪さが消費を悪くするのか、これは卵が先か鶏が先かの議論に似て答えは容易に出ないが、少なくとも消費者行動は低成長に適応しつつあると言える。

 貯蓄の増加は明らかに通貨の交換性より貯蓄性に人々が価値観を見いだし始めている徴候であり、黒田日銀流の「デフレマインド」の表れであろう。 これではトリクルダウンをいくら目指して金融市場に働きかけても、下流に行くまでに通貨は貯蔵に向かって取り除かれていき、金融市場内と貯金にお金が回るだけで実体経済に流れていかない。

 これからの金融政策は金融市場にお金を流すとか金利をいじるとかそういうマクロ視点だけでは成り立たず、いかに実体経済に働きかけるかという観点でミクロの効果も窺いつつマクロで論じていかなければいけなくなるだろう。 金融政策は往々にして末端においてその所期の目的とは逆の効果をもたらしていることもあり、複雑化する消費者行動に注目しつつ政策の舵取りをする必要がある。

 論点の一つは既存の雇用システムが雇用を創出してもそれが賃金上昇に結びつかないという新時代に突入しているという認識を持つことだ。 名目賃金上昇による貨幣錯覚に依拠した論理はもはや通じなくなりつつある。

 世界全体が低成長に進むなかでは、通貨システムや金融の在り方も含めて新たな地平を開く雇用理論が必要とされているように思う。

 

Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2016年 3/15 号 [創刊30周年 特別企画 国際情勢入門 病める超大国]


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